2025年3月キッズドームソライ利用料軽減に対する修正

●キッズドームソライ利用料軽減に対する修正案

 3月議会に、令和7年度の一般会計予算が提起され、こども未来推進事業における遊戯施設利用料軽減事業補助金24,782千円の歳出に修正案が出されました。
 修正案は、遊戯施設利用料軽減事業がキッズドームソライ(以下、ソライ)に限る利用料の軽減であり、他施設との公平性や地域全体の施設利用などを含めて、見直すべきであるという内容で、討論後に採決の結果、修正案が可決され、予算を見直すことになりました。
【市原案】
 こどもの遊び場に関する協議会での意見や親子モニター事業のアンケート結果を踏まえ、令和7年度からソライの利用(回数制限なし)料を軽減する遊戯施設利用料軽減事業補助金24,782千円を予算化する。
 令和7年4月から7月までを準備・周知期間とし、令和7年8月から実施する。
  ●0歳児          無料 → 無料
  ●1歳児        500円 → 無料
  ●2歳児        700円 → 無料
  ●3歳児~小学生  1,500円 → 無料
  ●中学生~高校生  1,500円 → 500円
  ●大人       1,500円 → 1,500円
  ●付添いの保護者    500円 → 無料(1名)
 利用当日にソライの受付において、市民であることを提示し、利用料軽減後の金額を支払い、差額を市が補助金(利用者に対する)として、ソライに支払う。
【修正案】
 3月議会に提起された議第7号令和7年度鶴岡市一般会計予算、第3款第2項第3目第18節「こども未来推進事業、遊戯施設(ソライ)利用料軽減事業補助金24,782千円の減額修正(予備費に繰入)を求める。

●令和7年度予算の一部修正案に賛成討論

●3月の定例会、新年度予算の一部修正案に賛成の討論(工藤博)
 ソライの利用料軽減事業予算の修正案に賛成を表明して、討論を行いました。
 以下、修正するべき理由として
【1点目は】
 ソライの利用料軽減が、鶴岡市こどもの遊び場に関する協議会において、多くの委員の賛同を得られていたのかということです。
 協議会がこれまで3回開催され、鶴岡市こどもの遊び場整備方針(案)がまとめられ、屋内外の遊び場について、施設形態ごとに整備の方向性が示され、市ホームページで公開されています。
 協議会を傍聴しましたが、委員からは、新たな施設を建設することよりも、地域にある既存施設の充実を図ることが大切であり、特に、ソライにこだわらないとの意見があったと思います。
 ソライに関しては「市民ニーズとして料金が掛からない方が良いとの声があるのであれば、まずさげてみてはどうか」との意見がある一方で「利用者が集中した場合の人数制限と怪我」「遠距離からの利用は困難な人が多い」「有料でゆっくり遊びたい人が遊びにくくなるのではないか」「ソライのツクルバで遊ぶと材料費もかかる」「ソライが屋内施設のすべてのソリューションになるという考え方を一度やめた方がいいのではないか」「他の大型施設と同じでなくても良いのでは」「鶴岡らしい形態で良い」などの意見が多くありました。
 更に、既存施設の掘り起こしをしていない状況が指摘され、閉校した小学校を活用した「こがたランド」のように地元の人たちが遊び場として整備した事例から、地域の身近に遊べる場として「コミセンや公民館、学校の活用」を図ること「出羽庄内国際村の一角に海外の遊びが体験できるスペース」を設けてはなど、お金をかけずに空いている既存施設を利用するのも一つの手法であるとの意見がありました。
 また、屋外の遊び場に関して「自然や文化、暮らしを題材にした体験活動ができる場所」や「プレーパークの設置」「障害者目線に合わせた遊び場」「既存の公園で世代間交流できる仕組み」「イカの一夜干し作り体験などイベントに対する支援」などの幅広い意見もだされました。
 最終的に事務局が「ソライの利用料について、アンケートや様々な場面で軽減を図ってほしいという声があることを受けて検討してきた」「利用者には様々な意見があると思うが、すべてに応えることは限界があり、多くの方が望まれている声を集約しながら、冬場や天気が悪い時に大型の施設で遊べる環境を整えていきたい」と、市主導により利用料軽減に関するまとめになったと感じています。
 協議会では、市の予算が限られている中で、既存公園の遊具更新や地域にある既存施設の充実、誰一人取り残さない遊び場の設置を優先的に求める意見が多くあり、ソライの利用料軽減に対する賛否は分かれていたのではないでしょうか。
【2点目は】
 ソライの利用料軽減が、子育て支援事業における平等性を確保できるのかということです。
 ソライの営業は、月曜日と金曜日は8時間ですが、火曜日と木曜日が3時間、休日と祝日が2時間の入替制度や人数制限、団体優先の時間帯などを設けていることなどから、利用者が特定されることが考えられます。
 協議会では、地域のイベントへの対応などの意見があり、子ども支援事業として、子ども真んなか支援チケットの配布など、ソライの利用だけでなく、賛同していただける施設やイベントで、使用できる取り組みの方が平等性を確保できると考えます。
【3点目は】
 協議会で出されたソライの利用料軽減以外の意見について、どの様に対応していくのかが示されていないことです。
 昨年3月議会で、遊戯施設利用料軽減事業補助金に係る実証事業に対して「子育て世代全般に受益の公平性を担保し実施」「市全体の屋内・屋外施設を含めた遊び場整備構想を早急に策定」「市民ニーズを調査し精査を進めるとともに、公設公営を原則とした、無料の自由来館施設を含めて早急に検討」の3点にわたる附帯決議を議会が市に提示しました。
 市民フォーラムは、ソライ以外の施設「山形県県民の海・プールスパールや、こがたランドなどの利用料軽減」「鶴岡市総合体育館、JA鶴岡だだちゃアリーナ、鶴岡市民プール、鶴岡ドリームスタジアム、スキー場など、市が所管する施設の無料開放」「荘銀タクト鶴岡での無料演奏体験」などを、市に提案してきました。
 更に、マリカ西館の市民ホールにおけるエアー遊具を活用した無料の遊び場の設置と、マリカ東館まんまルームとの連動も提案しており、会派による議員視察の際に、九州は中津市を訪問して、ビル内のスペースを活用した遊び場、なかつ・こどもいきいきプレイルームに関する報告も行っています。
 協議会における「障害のあるこどもが遊べる遊具がなく、きょうだいで公園に行っても我慢をしなければならない」「この機会にいろいろと考えていただけることを期待したい」との声は最も優先する事業だと感じています。
 ソライの利用料軽減以外で、協議会で出された意見、議会の附帯決議、議員からの提案に対する実施に向けての検討が不足していると思います。
【4点目は】
 ソライの利用料軽減が運営する企業への経営支援にあたると考えられることです。
 ソライは、市が2億円の財政支援を行い建設されました。
 ヤマガタデザイン(株)(以下、ヤマガタデザイン)から市を通して議会に提供があった「KIDS DOME SORAI の開発経緯」から、ソライの施設整備において「当初、鶴岡市民の無料を主張する市と、有料化を譲らないヤマガタデザインとの意見の違いから2015年11月に決裂」「2016年8月に市側から再協議を要請し、同年11月、建設費に対して2億円を補助することをヤマガタデザインと合意」と読み取れます。
 市の2億円財政支援について、疑問視する声などもあり、2018年12月の議会において「ソライの運営は民間事業者であり、その民間事業者が自社の経営理念等をもとに、責任を持って運営していくもの」との答弁があり、以降、ソライの経営について、市は支援をしない方針を示しました。
 そのわずか1年後の、2019年10月にヤマガタデザインから、官民連携による経営支援の要望書が市に提出され、市は要望を受け「市民のソライ利用料金を無料化するために年間上限3,500万円の支援を計画」しましたが、議会等から民間事業への救済措置ではないかという多くの意見があったため予算計上を行いませんでした。
 議会の判断を受けたヤマガタデザインが要望書を取り消し「民間事業への救済措置ではないかという否定的な意見がある中、答えを急ぐことには禍根が残る」「官民連携について市民が納得する答えが見つかるまで、必要となる議論を中長期的に継続し、引き続き民間主体で挑戦したい」と新たな要望書が出されています。
 今回のソライの利用料軽減は、利用者に対する支援であり、企業に対する支援ではないと市は説明していますが、2019年にヤマガタデザインから要望があり、以前、市が判断した状況と変わりがないと考えます。
 これまでの経過を考えると、結果的に経営支援を行うことにつながると考えるのは一般的ではないでしょうか。
【以上】
 遊び場に関する意見の集約方法と検討内容、地域全体の平等性、ソライの運営状況の把握などに不備があると考えられることから、この度の、ソライだけを対象とした小学生までの無償化を含む利用料軽減の事業に反対し、協議会で出された多くの意見を早急に実現するよう要望して、修正案に賛成の討論とします。

●まだまだ疑問を解消していく必要があります

【疑問①】
 ソライの整備にあたって、事業実施主体である(株)SHONAI(旧ヤマガタデザイン、以下、SHONAI)は、ソライの建設費に、国の補助事業である森林整備・林業等振興整備交付金を活用するための計画を国に提出しており、2023年度までに113,420人の利用人数を設定しています。
 また、2018年12月議会で、ソライに対する2億円の補助金交付にあたり、市の答弁でも年間利用者数を11万から12万人と設定していることが示されています。
 実態は、SHONAI が交付事業の実績として、国に報告している2023年の利用者数は53,187人で、年間利用者数は目標人数の半分以下であり「目標人数がどの様に実現されていくのか」「採算ベースが何人なのか」などが不明確です。
 目標の年間利用者数11万人は、年間営業日が300日だとすれば、1日370人が利用しなければ実現できない数値であり、市がソライの活用に向けた協定の締結を行う際、ソライの利用状況を把握していたのかが疑問です。
【疑問②】
 SHONAI が、交付事業の実績として、国に報告(農山漁村振興課が担当)している2023年の利用者数は53,187人で、子育て推進課による資料では42,605人で、1万人以上の違いがあります。
 また、SHONAI の活動における、ソライのプラチナサポーターとして支援する記事では、年間85,000人が訪れる施設と紹介し、ソライを支えるSORAIソーラーのホームページでも、山形県内外から年間85,000人の親子が訪れるとしていますが、企業に関する取材記事においては、県内外から年間90,000人が訪れる施設としています。
 国に報告している利用者数との差が約32,000人、子育て推進課から提供されている利用者数との差が約43,000人、この利用者数(訪れる人?)の違いは誤差の範囲を超えています。
 SHONAI のソライ運営に対する理想が高くても、公表している利用者数が時と場合で異なり、市はどの数値を信用して、ソライの運営状況を把握しているのかが疑問です。
【疑問③】
 ソライは補助による処分制限期間の令和24年7月31日まで、責任をもって運営する必要があり、その間、施設の維持費が増大することは必至で、今後、修繕費の補助などの要望も考えられることから、市が官民連携の範囲をどこまで考えているのかが疑問です。
【引き続き】
 ソライはこどもの遊びを提供している民間(SHONAI)が運営している私的事業であり、自治体が行う公益事業とは、観点が異なることを改めて考える必要があります。
 官民連携との意見もありますが、民間事業であるソライの運営に市が関わることが出来ないため、問題点の把握が出来なくなる恐れがあります。
 市民フォーラムは、市とSHONAI がソライ建設や運営に関連して、どの様に協議してきたかを明らかにするため、公文書開示の請求を行っており、引き続きソライとの官民連携に関しての疑問を整理していきます。