2023年3月県立病院解体問題(人工芝サッカー場整備)

●旧県立鶴岡病院の解体と人工芝サッカー場を整備する事業

●3月の定例会、新年度予算案に反対の討論(工藤博)
 今定例会に市からは、長年放置されてきた県有遊休施設である旧県立鶴岡病院を解体し、跡地利用として人工芝サッカー場を整備する事業が提案されています。旧県立鶴岡病院の解体に約13億円、サッカー場整備に約10億円、サッカー場のLCCが40年で約35億円と試算しており、令和5年度の予算では、解体工事費(5億1,200万円)及び解体工事監理業務委託料(200万円)、及び事業に関連する債務負担行為と地方債が提案されています。
 この原案に反対し、修正案に賛成する理由として

【1点目は】市民や市議会に対する、市の説明責任が不十分である事です。
 鶴岡市重要事業の要望は「県が責任をもって旧県立鶴岡病院を早期に解体することであり」「2番目に旧県立鶴岡病院を含む県有遊休施設の跡地有効活用方策を県において講ずること」「3番目に県有遊休施設の跡地を候補地とした教育施設等を整備する場合の支援すること」を求めるものです。
 現在、市議会に提案されている内容は「県の財政が厳しいから、旧県立鶴岡病院を市の財産にして、過疎債を活用すれば解体とサッカー場の整備が可能であり、鶴岡市重要事業が解決します。解体にあたっては県が1/2負担することを約束しています」というもので、本来、責任を果たすべき立場の県が、解体を要望している市を利用して、問題を解決する事業になっています。これまで市民や市議会に説明してきた鶴岡市重要事業の本質から外れてしまっているのではないでしょうか。
 昨年秋から市は県と協議を行い合意したとのことですが、市議会には市長説明の約3週間前の2月8日に2枚の概略資料の提示だけで、県の負担割合や過疎債の活用などの具体的な記載もなく、審議するには不十分な対応だったのではないでしょうか。国や県への予算要望にあわせて、市議会に内容を提示する必要があった事業だと考えます。令和5年度にサッカー場の基本計画を策定する予定ですが、現在、提示されている内容で、人工芝が敷かれた多目的競技場や練習グランド、周辺整備や駐車場など事業の全容をイメージ出来る市議会議員は何人いるのでしょうか。
 令和4年12月27日に行った「旧県立鶴岡病院の解体及び跡地活用に関する勉強会(以下、勉強会とする)」において、県病院事業局長の「市議会のコンセンサスは大丈夫か」という問いかけに、副市長が「県の建物に対して市が解体費を負担することはどうなのかという議論は出てくる」と回答しています。現在、想定されていた議論が起こっており、市は市議会と十分なコンセンサスを得るための対応を行う必要があったのではないでしょうか。

【2点目は】県の姿勢に対しての疑問であります。
 市が過疎債を使って実施しようとしている事業が、県から提案されたものであることに疑問を感じます。過疎債は、総務大臣が各都道府県に同意等予定額の通知を行い、各都道府県の知事が市町村ごとに許可を行う地方債であり、許認可の権限を持っている県が、過疎債を利用した県有遊休施設の解体事業を提案することは、市に対する越権行為であり、地方分権一括法にある市と県の「対等・協力関係」を崩す行為であると考えます。
 市にある県有遊休施設は他にもあり、今後、同様な事例として悪い事例になってしまいます。旧県立鶴岡病院は特異な事例であるとの声がありますが、令和4年11月14日の勉強会で、副市長の「今回の解体の件は、県として前例になるのか」という問いかけに、県病院事業局長が「一つのモデルにはなると思う」と答弁しています。現在、県立新庄病院が10月開院にむけて建設されていますが、新庄市は過疎債が活用できない自治体であることから「一つのモデルにはなると思う」には該当しません。県内で過疎債が活用できるのは全部過疎20自治体、酒田市が一部過疎、鶴岡市はみなし過疎で、その地域にある施設に当てはめて検討することは明白です。
 また、同会議内で「市として費用負担が全くできないということなのか。このスキームでやるためには、お互い痛み分けで進めていかないといけないが、その方向性で良いか」と県病院事業局長が発言しています。県有遊休施設である旧県立鶴岡病院の解体を市が負担するという事業は、地方自治法第2条5項に明記されている「都道府県の役割として、一般の市町村が処理することが適当でないものを処理するもの」に反した行為・発言と感じられ、厳しい言葉で言えば、県による県政自治の放棄であると考えます。

【3点目は】費用の負担感と周辺施設整備に関する疑問であります。
 勉強会の資料によると、取得する土地の評価額は3,300万円とされています。旧県立鶴岡病院跡地を取得するために、施設を解体する費用が約6億5千万円、過疎債を活用して市の実質負担が1億9,500万円と、全体の15%の費用で解体が出来るとしていますが、用地取得に必要な費用の6倍以上もの予算を執行する提案は、地方自治法第2条14項にある「最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」という観点に反していると考えます。
 市から県に、解体後に整備される施設へのアクセス改善のための改良工事や、市道のアクセス道への支援を求めていますが、県は「サッカー場整備が決まってから改めて検討すべきもの」と回答しています。県からの提案で事業を進めようとしているにもかかわらず、将来の施設の課題に対しては先送りであり、支援に対しても何の確約もありません。これまでの経過から、道路等の施設整備は病院会計に予算を計上できないため、市で対応して欲しいと言われることが想定されます。
 鶴岡市重要事業にはLCCの観点から、サッカー場の維持に支援をして欲しいと要望をしていますが、40年間で35億円に対する支援も示されていません。

【4点目は】一番大きな問題である、県の責任放棄・自治放棄と思えることです。
 旧県立鶴岡病院は県有遊休施設であり、県が責任を持って解体するべき施設です。
 3月20日に開催された議会全員協議会で「県が解体費を負担するのは困難であるという」県の考えが示されているとの説明でしたが、本当にそうなのでしょうか。先日、県議会で可決された新年度当初予算は6,800億円を超え、新事業も多く盛り込まれています。その中で、旧県立鶴岡病院解体として、鶴岡市への負担金は約2億7,000万円で、県予算規模の1/2500にあたる約0.04%です。旧県立鶴岡病院の解体費を計上すると、山形県は財政破綻に至るほどの財政危機なのでしょうか。
 解体費総額約13億円、これを4年かけて行う予定ですので、年平均でも3億2,500万円、県の予算規模から考えると0.05%の支出を4年かけて、支出することが困難という県の主張は理解できませんし、そのことをそのまま市議会に伝える市の説明では、到底納得ができません。むしろ、県と比べ財政規模が1/10程度の本市の負担は、非常に大きいと言わざるを得ません。
 県は、本市議会の場で説明を行うべきだと考えますし、市も公開の場での説明を県に求めるべきだと考えます。旧県立鶴岡病院の解体を放置して来たのは県であり、県の責任が折半による解決で納得してはいけない課題です。
 この度提案されている予算案に賛成の議員は、本来支払うことのない県の施設解体に市の予算を使用することに対する責任をどのように考えているのか疑問です。市民も県民であり、県は県、市は市として、それぞれの役割を果たすことが本来の姿なのではないでしょうか。

【最後に】塩漬けになるとの課題がありますが
 この度、県から過疎債の活用が提案されました。過疎債の募集は政府予算が可決すれば県を通して総務省が受け付けるとされています。今後、十分な議論を行ってからでも過疎債の活用は可能であると思われます。

 以上申し上げ、議題5号令和5年度鶴岡市一般会計のうち、旧県立鶴岡病院解体及び人工芝サッカー場整備に関わる予算の部分について、市民フォーラムを代表して、原案に反対の討論とします。

●旧鶴岡病院の解体と跡地活用について(市提示資料)